第12話:僕の歌は君の歌

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第12話:僕の歌は君の歌

 一人の男がスーツの上着を脇に抱え、片手でパタパタと自分の顔を扇ぐ。容赦なく平等に降り注ぐ強い日差し。木陰に居るにも関わらず「あっちー」とでも叫んでいるかのような蝉の鳴き声。男はうんざりしながら歩き、目に入ってきた自販機に引き寄せられる。そして、普段はあまり飲むことのない炭酸飲料水を買った。涼やかなビー玉のプリントに、堂々と書かれたサイダーという文字が魅力的でならなかったのだ。男は公園を見つけ、ふらりと園内に設置されたベンチへと足を進める。 「はい蘭丸鬼ぃ!」 「ああああ!! ジュンさん、前! ジュンさぁん!」 「へ? うわっ」 「おっと……っ」  公園で二人きりの鬼ごっこをしていたジュンと蘭丸。全速力で走ってきたジュンと男が衝突する。男が手に持っていた買ったばかりのペットボトルが吹っ飛んだ。 「御二人とも、大丈夫ですか!?」 「う、ご、ごめん。わざとじゃないよ」 「あー大丈夫大丈夫。そっちも怪我ないか?」 「え、あ……うん」  蘭丸とジュンは呆気に取られる。蘭丸がジュンの隣に立ち、こそっと小声で話した。 「ジュンさんに全力でタックルされてビクともしないとか、この方只者では御座いませんよジュンさん」     
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