第13話:分かり合えないもの

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第13話:分かり合えないもの

 洞窟のような場所で、コツコツとゆっくり靴音が響く。岩に囲まれたその場所は、所々に松明が置いてあるだけで他に何もない。最奥部まで約百メートル。最奥部には小さな泉があった。まるでサファイアのような、美しい青の泉である。その泉付近に立っていた豪華な和服を着た長い白髪の男が、靴音が止まった入り口に目を向けた。紅葉のような茜色の瞳である。その視線を受けた入り口に立つ短髪の男は、口角を上げて肩を竦める。この男も、白髪である。 「わざわざ俺を呼ぶなんて珍しいじゃねぇか。何か御用かいボス」  短髪の男がそう言って、長髪の男に近付いた。 「……まだ、力が戻らぬ。あと少しなのだが」 「成る程。で、俺にどうしろって? まさか、下に降りろなんて言わねぇよなぁ?」 「ヴォルフを降ろしたのは、我の誤りであった。……奴は血の気が多すぎる。他の犬どころか、ジュンをも殺しかねん。それだけは阻止せねばならん」  短髪の男は頭を掻き、面倒くさそうに眉を寄せた。 「はぁ? なんだ、あんたそこまで力弱まってたのかよ。本来、あんたの加護がついてるあのシェパードがヴォルフにゃ負けたりしねぇだろ」 「それならば貴様を呼びつけたりはせん」     
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