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「これ、彼が此処に来た時にでも渡してくれないかな」
鈴とマフラーを身に着けた猫目の男が、吟遊詩人に何かを差し出す。鈴が付いた黒猫のストラップだ。吟遊詩人は微笑み、それを受け取る。
「ああ、確かに受け取ったよ。必ず渡そう」
「うん」
男は吟遊詩人の横に座って雲ひとつ無い空を見上げた。
「あまり、無理しない方が良いと思うな。……また、盲目に戻ってしまうよ」
男の言葉に、吟遊詩人は霞んでいる視界に目を細めそして閉じる。
「もうこの力を使うことは無いだろう。そうであることを願うよ。しかし、無理を貴方に指摘される日が来るとは思ってもいなかったなぁ。貴方も気を付けて。見かけによらず貴方は、無茶苦茶だからね」
その吟遊詩人の言葉に、男は肩を震わせくすくすと笑った。
「僕は良いんだ。猫は気まぐれだからね」
〈第18話に続く〉
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