第1章 輝くクリスマスは過去のもの

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  クリスマスへの意識が段々変化していったのは、中高生の頃。物心つく頃から近所や親戚のおばさんから「大人しくて頭のよさそうでいい子ね」と言われていた僕は周囲の期待通り成績が良くてイケてないグループに属する真面目な中高生となった。今でいう陰キャである。陰キャとは日陰者の意だ。中高生といえば思春期真っ盛り。中学生の頃にはサッカー部やバスケ部のイケメンには彼女がいても普通であったし、「あいつら付き合っているらしいよ」なんて噂もちらほら小耳に挟むようになっているのである。そして僕は期待を裏切らずに卓球部員であった。彼女なんて当然いるはずもない。それどころか小太りのゲームオタク少年大川君が唯一の友人であるという悲しい青春時代であった。高校生になってもこの状況は変わらず、近くの偏差値が高くなくまあまあな進学校へ通い相変わらず真面目な男子学生というポジションで日々を過ごしていた。高校生にもなると付き合っているどころではない。「あいつ童貞卒業したらしい」とか「あいつらホテルに入っていったのを見た」とかいわゆるそういう男女の話が嫌でも耳に入ってくる。そう、この頃のいわゆるリア充グループにはクリスマスはカップルの日となるのだ。家族と楽しい日を過ごすのを卒業して恋人と手を繋ぎ、プレゼントをし、キスをし、その先ももちろん含めて愛を深める日へと形を変えていくのだ。…とはいってもそれはスクールカースト上位の奴らの話であり、相変わらず僕にとっては中学生になってもクリスマス家族と共に過ごす日であった。しかし、流石に高校生にでもなると家族と一緒に過ごすことに羞恥心を感じて中学生からの親友大川君と自室に籠ってケーキとポテチを貪り、それを2Lのペットボトルからプラスチックのコップに注いだコーラで流しこみ、油まみれの手をティッシュで軽く拭きながらテレビゲームコントローラを操作し、格闘ゲームで対戦するという家族愛とも恋愛とも無縁のクリスマスを過ごすようになった。それが定番となっていた高校三年生のクリスマスイヴ、大川君がポテチをバリバリと咀嚼しながらこんなことを告白したのである。 「俺、言ってなかったことがあるんだけど…」
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