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超能力
幼い頃から、人の言葉と内面は時に正反対のものであるということを知っていた。
「なぁ信海、聞いてくれよ! この前さ~、あいつがマジで面白くてさ~」
佐藤信海(サトウ シンカイ)。それが俺の名前だ。
「どうした?」
友人に話し掛けられ、返事をする。
何気ない会話。普通の会話。仲の良い友人同士のような会話だけれど、俺は分かってしまう。読めてしまう。相手の考えていることが、頭の中が分かってしまうのだ。
目の前の友人は、話題に出したあいつのことを¨面白い¨と言った。けれど俺には分かってしまう。本心ではあいつを蔑んでいるのだと。
俺のこの力は、世間一般では『超能力』と呼ばれているものであるようだ。常人の能力を超えた力、超能力。まさに俺のはそれだ。相手の考えていることが分かる。それが、俺の力。
物心ついたときには、自分のこの力が他人には無いことに気がついていた。超能力だということも、いつの間にか知っていた。
相手の考えを読める。それは一見すると、素晴らしいもののように思えるかもしれない。しかし、実際は違う。とても、とても辛い。人の裏表が全て分かってしまう。それはつまり人を信じることができなくなるということだ。他人を信頼することなど、できはしない。相手の隠している部分まで分かってしまうということ。それはとても哀しいことである。俺は、それを真に理解しながら生きている。
この能力のことは、誰にも知られてはいけない。死ぬまで一生、隠し通さなければならない。もしバレてしまえば確実に、平穏な日々は送れない。それは嫌だ。俺は普通の人間として、普通の生活をしたいのだ。
だから、これまで隠し通してきた。
なのに・・・。
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