数学

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

数学

「佐藤、ちょっと来い」 担任に呼び出されたのは、その日のテスト後だった。 「何でしょうか?」 「お前・・・」 カンニングしてるんじゃないのか?そう言いたいのだろう。頭の中など読まなくても分かる。授業中いつもぼーっとしている俺が、勉強をしている様子もないのに毎回テストで高得点をとっているのだ。カンニングを疑うのも仕方がないだろう。 「今日の数学のテスト、これを今ここで、俺の目の前でもう一度解いてみろ」 「はい。分かりました」 カンニングではないことを証明すればいい。ただ、それだけだ。 1対1のテストが始まった。まずは、自分の名前を書く。あとは、ぼーっとしていた。いつものように。 数分が過ぎた。俺の答案用紙にはまだ名前しか書かれていない。誰かが解かなければ、俺には答えなど分かりはしないのだから書けない。 するとついに、担任が問題について考え始めた。この問題を作ったのは、確かこいつだと言っていた。俺の担任は、数学科の教師であるのだ。担任は頭の中で、いよいよ問題を解き始める。そして、その通りに、俺は解答用紙に書いていく。 「(この問題は、この数式を使って・・・)」 数式か。そんなもの習った覚えがない。でも、問題はない。担任が問題を解いて、俺はその頭の中を読んで書くだけなのだから。 「(あ、そういえば今日は・・・)」 担任が、問題を解くのを止めた。俺の手も止まる。 再び解き始めた。俺もまた書き始める。 「(ん?)」 まずい。 「(こいつ・・・)」 ・・・バレてしまったのか?同時に解くのを止めたり、解き始めたからバレてしまったのか? 「(ひょっとすると、オレの頭の中を読んでるのか?)」 バレた!!ついにバレた。やらかした。 「(っ!! オレが今、佐藤が頭の中を読んでいると気付いたことに気付かれたかもしれない!!)」 バレている。完全に。完璧に。 どうする。どうなる。これからどうすればいい? 結局そのあと、テストはもう止めていいと言われた。帰り際、何か俺の能力について言ってくるかと思ったが、何も言っては来なかった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!