数学教師

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数学教師

俺のクラスの数学担当は、例のあの担任であるのだが、そいつは思っていた以上にとんでもない奴だった。翌週の数学の授業中に、それは発覚した。 「(暇だ)」 暇すぎる。ぼーっとするのにも飽きてきた。そんな時、俺はいつもそうするように誰かの頭の中を読む。今日は、目の前で数学の授業をしている担任にしようか。この前のことがあって以来、担任の頭の中は読んでいなかった。 「(さて)」 頭の中を読む。少しすると担任は、俺に今頭の中を読まれているということに何となく気がついたようだった。 「(ん?何だ?)」 いきなり、読み取り辛くなった。 「(どうしたんだ?・・・っ!!)」 脳が押しつぶされている。 何なんだ。何なんだ、一体。担任は何を考えているんだ!? 人間の脳がずたずたに裂ける光景が読めた。さながら、生のレバーを網で押し潰したかのような。機械にセットされたところてんが押し出される様子にも似ていた。人間の脳がところてんの代わりとなっている。グロい。グロすぎる。そしてリアルすぎる。 これは一体なんだ?担任からの抗議なのか?オレの脳内を読むな。そういうことなのか? それから数日間、俺は幾度も担任の頭の中を読もうと試みた。担任は、それに気付いた瞬間、再びあの映像を頭に浮かべるようになった。 俺はついに、諦めた。諦めるしかなかった。俺が保たなかった。グロすぎたのだ。 それ以来、俺は一度も担任の頭の中を読もうとはしなかった。俺も近寄らず、担任も近づいては来なかった。 そして時間は流れ、ついに卒業式を迎えた。三年間、担任は俺の能力について何 も触れず、周囲にバラすようなこともしなかった。そのおかげか、俺は平穏な日々を過ごすことができた。
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