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ガタンゴトン、ガタンゴトンと揺られながらどこかに向かっている。
特に行く場所を決めている訳でもなく、ぼーっと電車で、揺られている。
一体、これで、何回目の家出だろう。
ふらっと、明日が来なければいいのにと思いながら出て来てしまった。
ガタンゴトン、ガタンゴトンと繋ぎの扉がガタガタと開いたり閉まったりする音が耳に刺さる。
仕事に行きたくない。もう、疲れた…
明日よ、来ないで!と心の中で強く呟く。
そんな私に、だんだんと突然、眠気が深く襲って来た。
目を閉じる。
揺れる電車。暖房で、顔が乾燥する。
どこでもいい。どこでも…
ただ、遠くに遠くに…行きたい。遠くに遠くに…
扉の開け閉めの音が、だんだんと私の耳から、遠のいていく。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
「まもなく、雪島、雪島に止まります」というアナウンスが、流れる。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
また、深夜くらいに家に結局、帰って、明日、いつものように、何事もなく仕事に行って、仕事をして…
そんなことを考えていると、思わず、はーぁと大きなため息を吐いてしまった。
いつもだったら、この辺りの駅で、降り、引き返し結局家に帰るのだけど、足が動かなかった。やけに足は重い。降りることが出来ない。
「もう少しで、雪島、雪島でございます」というアナウンスが耳に入りながらも、駅に着いても、降りなかった。
目は、そのまま、閉じたままである。
そして、さらに、深い眠りにつき始める。
静かに、電車に、揺られながら。
制服を着た私、まだ、16歳である。
肌がまだピチピチで、若くて、今の状況なんて考えてもない高校生である。
下駄箱で、靴を履き替えていた時だった。
「おはよう!」と後ろから、声がし、高校生の制服を着た私は、その声に振り返る。
「…」
そこには、あの頃の微笑んだ彼女の姿があった。
「…」
「ねえ?愛莉?愛莉!」と心配そうな顔をしているのは、私の親友であった、唯だった。
「…え?」
「どうしたの?そんなに、ぼーっとして?」
「…え?」
はーぁと彼女はため息を吐く。
「おはよう」
「あ…おはよう…」
彼女の顔は、微笑みへの変わった。
そして、「ねえ、放課後、一緒に、このお店に行かない?」と雑誌を見せて、言う。
「…いいね…」となんか、ぎこちない感じで、彼女に話す私。
その時、私は、なんか、威圧的な視線を感じていた。
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