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「私も半年前、お父さんと花火をしたんだ。」
「まぁ、そうだったの?どうして誘ってくれなかったのかしら。」
「朝三時半にアラーム掛けて、起きろなんて言われたらお母さん怒ったでしょ。」
そう言うと、母は少し考え込む素振りをした後、拗ねたように言った。
「そりゃ、いきなりだったら怒るかもしれないけど事前に言ってくれたら参加したわよ……きっと、多分。」
ムスッとしてしまった母を宥めながら、あの時父と話したことを思い出して、また泣きそうになった。
「今度は三人で……って言ったのになぁ……。」
その願いはもう叶わない。父はもういない。私たち家族が3人になることは、もうない。
どうしようもない悲しみがまた、私を飲み込もうとした時、背中にトンッと優しい衝撃が来る。
衝撃の方向に目を向けると、母の優しい微笑みがあった。
「何言ってんのよ。また3人でやるに決まってるでしょう。」
優しい微笑みから、相好を崩して、晴れやかに母は笑った。
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