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深夜に起きて、縁側へ向かうと見慣れた細い背中があった。 髪には白が増えて、また歳を取ったなぁと思った。 「お、何だ眠そうだな。ちゃんと顔洗ったのか?」 「洗ったけど、そんな簡単に眠気は取れないよ……あれ、お母さんは?」  てっきり家族みんなでやると思っていたのに、そこに母の姿はなかった。 「まだ寝てるよ。こんな時間に起こしたら迷惑だろう。」 「正論だけどそれ、娘を起こさせた人が言うことじゃないよね。」 「娘だから大丈夫なんだよ。」 「……なにそれ。」  悪戯っぽく笑う父の脇腹を軽く肘で小突いて隣に腰を下ろし、庭の方に目を向けた。 「うわ、すごい花火の量。これ今日で全部やるの?」 「そりゃあ、娘の門出は派手にやらないとな。 一時間はできるぞ、この量なら。」  驚いた私にそう言う父の笑顔は少年のように輝いていた。その笑顔が私は好きだった。 そう思って、急に寂しさが込み上げてくる。明日でこの笑顔は私の日常から消えてしまう。 新しい生活には父の笑顔はもう当たり前のものではなくなるのだ。  それだけで、日常の変化というのは一つの世界の終わりのようにも思えた。
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