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半年前のことを思い出しながら、線香花火の燃えた後を眺めて、私は浅く息を吐いた。
「お父さんの、嘘つき。」
本当に、どうしようもなく嘘つきだ。
さよならを一瞬のものにするだの、また頑張れるように支えてやるだの。
何もかもが嘘ばかりだ。
嘘に……なってしまったのだ。
さよならは永遠のものになり、支えて、頭を撫でてくれる手はもうない。
自分を救ってくれた存在はもういない。
それだけで自分の何もかもを失ったかのようだった。
縁側に腰掛け、蹲った。
こうやって自分を抱きとめないと、私はきっとバラバラになってしまうような気がした。
(いや、もういっそ壊れてしまおう)
考えてしまえば一瞬だった。私は先ほどまであんなに壊れることを拒否していたのに、一瞬の間だけ沸いたその感情に私は身を任せ、壊れることを選んだ。
けれど、私が壊れることはなかった。
そこにやってきた人物の余りに優しい抱擁に、壊れることを受け入れた私の心は包まれてしまう。
「朱音。」
私を抱きしめながら、その人は私の名前を呼ぶ。心の底から愛おしそうに、父が私の名前を呼ぶように。私の大切な家族のもう一人。
「お母……さん……。」
「思いっきり泣いていいわよ。」
幼子をあやすように優しく髪を撫でながら私に言った。どうしようもないものが胸から堰を切って溢れ出してきて、母の胸で私は泣き続けた。
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