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ヴィントは腰につけた水袋を外すと、その布の塊に向けて差し出した。
すると、ボロ雑巾の中から真っ白な細い腕がにゅっと伸びてきて、水袋をガッと掴んだ。
凄い勢いで水袋を布の奥に引き込むと、むくりと起き上がり、音を立てて飲み始める。
しばらく嚥下する音がしていたが、飲み干して満足げに息を吐いたのを見計らい、ヴィントはそのボロ雑巾を引っ張った。
マントを剥ぎ取られ、びっくりした表情の浮浪者は…小さな子供だった。
薄汚れた灰色の髪は肩まであり、煤けた顔は白く、目は空の色より深い藍色。
体つきからしても、15歳にはまだなってはいないくらいの子供のようだ。
「お前、名前は」
子供は少し考える様子を見せたが、すぐに「サキル」と返してきた。
「サキル、ね。お前、もうすぐ日も落ちてくるっていうのにこんな所にいたら、追い剥ぎにあうか人攫いにあうか、獣に喰われるぞ」
そう脅すと、サキルと名乗った子供は体をぶるりと震わせて、目を伏せた。
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