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第5章「 アイオリアン 」
フィアナの記憶は、一気に惑星アイオリアンに戻っていた。
「フィアナ、ここに来なさい。」
「なあに、おじいさま」
「これから皆に、ご神託がくだされる。
一族は、皆 揃って瞑想に入らねばならぬ。」
大きな丸天井があるホールには、神々が人々を導く日ということで、フィアナの一族も集められていた。
それぞれの建物には役割があり、このホールは主要な都市の中心にあった。
空から観ると浮かび上がって見える丸い目、それが美しい宝飾に飾られているペンダントのように輝いていた。
一説によると、動物の目、鷹の目をデザインしたと言われていたが、それは神々が遥か遠くまで見通せる目を持つからという意味だったらしい。
宇宙からみると、嵌め込まれたガラスは惑星アイオリアンの無数の目のようにも観えたという。
「おじいさま、ご神託ってなあに?」
「神々からの言葉じゃよ。
正しく美しいお言葉じゃ。
人々を導かれる神々の、予言という。」
フィアナはその日、初めて一族と共に瞑想空間に入ることを許された。
それは子どもが初めて大人の世界を知ることを許される日でもあった。
その大きな丸い天井を見上げている一族の顔は、輝いてみえた。
その瞬間は、フィアナにとって一生忘れることのできない時になった。
それは、今の、セイレーンにいるフィアナの姿を目に焼き付けたから、だった。
神の声が響いた。
「フィアナ、選ばれし女神よ。」
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