ストッキングマン

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岐阜市内の菓子メーカーの工場に勤める江乃頭満秀は繁忙期ではない限り、きっちり定時に帰る。 上司に誘われた時や歓迎会や送別会など、立場上、顔を出さなければならない場合以外は極力、存在感を消す。 飲み会などまっぴらである。そもそも私は誘われはしないが。 最寄りの大垣駅から帰路につく。今日はやけに学生が多いな。電車に揺られながら外の景色を眺めていると、近くの女子高生二人の会話が耳に入ってきた。 いや、正確に言うと聞き耳を立ててる。 「ねぇ舞、聞いてよ。また出たんだって!」 「出たってなにが?」 出たって言ったね君。もしかしてと思うが、そろそろ噂になっていても良い頃だ。流れる景色に目線をやりながらも、私は耳を集中させた。 受信感度はバリサンだ。
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