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「ん、発情期は終わったようだね。一応興奮抑制剤を出すよ」
ラビィの心音を聞いていた医師は、そう言って聴診器を下ろした。ラビィは強張りを解いて、ホッと息を吐く。
アルベルトは、医師を部屋の外まで見送った。彼は眼鏡の向こうからこちらを見て、目を細めた。
「おまえさん、あのうさぎ娘と寝ただろう」
「え?」
「発情期は異性を誘って子を孕むためにあるからな」
「……子供」
ラビィに似た、ふわふわのロップイヤーの子供たち。さぞかわいいのだろう。アルベルトはうっとりした。
医師は呆れ顔でこちらを見て、
「自国の王子が獣好きとはなあ」
やれやれ、と言いながら去って行った。
★
パーティまであと3日に迫ったころ。アルベルトはバラ園に据えられたテーブルに着いて、パーティ当日の警備の打ち合わせをしていた。タージュは城の見取り図を片手に、真剣な顔で説明する。
「この生垣部分を……」
アルベルトは彼の意見に頷き、
「うん、いいと思うよ」
「外部から多くの客を迎えるのは久しぶりですから、念には念を入れます」
「ああ、頼むよ」
「ええ。アリの子一匹通しません」
タージュがキリッと言う。バトラーとフレッドが口を開いた。
「隊長、なんか張り切ってますねえ」
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