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「私はあなたのペットじゃないわ、アルベルト。気安くさわらないで」
彼の手を振り払い、きっ、と睨みつけたら、アルベルトは端正な顔立ちをこれ以上ないくらいに崩す。
「あんまりかわいいと抱き潰したくなる」
睨んだのになぜ! じりじり近づいてきたアルベルトから、ラビィもじりじり後ずさった。捕まえようとした彼の腕からぴょん、と跳ねて逃れる。ふわっと広がったスカートを見て、アルベルトが目を輝かせた。
「ああ、今のかわいいね。もう一回して」
「しないわ。あなた、気持ち悪い」
「よく言われるけど、かわいいものを見て素敵だと思うのはいいことだよ」
「人間の「かわいい」は、所詮もの扱いに過ぎないんだから。私はそれを、よく知ってるわ」
そう、ラビィがここに来たのだって、そもそもは奴隷として売られていたからなのだから──
☆
アルベルトと追いかけっこをする、二週間前。
「さあ、よってらっしゃい、見てらっしゃい! 世にも珍しいうさぎ人間のお目見えだよ!」
人目につかない路地裏の、薄暗い店は、異様な熱気に包まれていた。そこでは、奴隷売買が行なわれていたのだ。
売られた女の子が、虚ろな目で連れられていく。
(次は私の番だわ)
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