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出会ってもふられ
少女が、磨き抜かれた廊下を必死に駆けていた。彼女は、「あるもの」から必死に逃げている。きらきらだが、敵。少女がとても、苦手としているもの──。
少女は、建物内からバラ園へとくだる小さな階段をぴょん、と超えて、茂みの後ろに隠れた。ここまでくれば大丈夫だろう……
少女はぜいはあと息を吐き、額の汗をぬぐった。小柄な体躯に、手作り感満載のワンピースをまとっている。一見どこにでもいそうな少女だが、特筆すべきはふわふわしたロップイヤーだ。
頭上からすっ、と伸びてきた腕が、少女をとらえる。
「捕まえた」
身体をつつんだぬくもりに、少女はぶわっと赤くなった。そのまま抱き上げられる。
「どうして逃げるの? ラビィ」
耳元に降った甘い声に、びくりと身体を震わせる。
「はっ、離して!」
じたばた暴れていたら、吐息が耳にかかる。
「ひ!」
「ふわふわの耳が、今日もとってもかわいいね」
ちゅっ、と耳元に口付けられて、ラビィは真っ赤になった。どうしたらいいかわからなくなり、ぶわっと耳の毛が逆立つ。身体に回った腕をポカポカたたいた。
「離してってば!」
「照れ屋なところもかわいい」
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