出会ってもふられ

1/10
492人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ

出会ってもふられ

 少女が、磨き抜かれた廊下を必死に駆けていた。彼女は、「あるもの」から必死に逃げている。きらきらだが、敵。少女がとても、苦手としているもの──。  少女は、建物内からバラ園へとくだる小さな階段をぴょん、と超えて、茂みの後ろに隠れた。ここまでくれば大丈夫だろう…… 少女はぜいはあと息を吐き、額の汗をぬぐった。小柄な体躯に、手作り感満載のワンピースをまとっている。一見どこにでもいそうな少女だが、特筆すべきはふわふわしたロップイヤーだ。  頭上からすっ、と伸びてきた腕が、少女をとらえる。   「捕まえた」  身体をつつんだぬくもりに、少女はぶわっと赤くなった。そのまま抱き上げられる。 「どうして逃げるの? ラビィ」  耳元に降った甘い声に、びくりと身体を震わせる。 「はっ、離して!」  じたばた暴れていたら、吐息が耳にかかる。 「ひ!」 「ふわふわの耳が、今日もとってもかわいいね」  ちゅっ、と耳元に口付けられて、ラビィは真っ赤になった。どうしたらいいかわからなくなり、ぶわっと耳の毛が逆立つ。身体に回った腕をポカポカたたいた。 「離してってば!」 「照れ屋なところもかわいい」     
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!