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お米くらいの箱
「有香さん、おはようございます」
玄関先のプランターに水をやっている有香に二人が声を掛けた
「あら。華乃ちゃん雪乃ちゃんおはよう」
手を振り歩き出した姉妹に、そうそうと言って有香が二人に近寄る
「雪乃ちゃん、こないだはありがとうね」
「どういたしまして」
「どうしたの?」
姉の華乃が妹の雪乃に聞くと違うのよと有香が続ける
「こないだ私が、郵便屋さんから荷物を受けとる時に貧血で倒れそうになっちゃって。で、その時たまたま通りかかった雪乃ちゃんが荷物を受け取って玄関に運んでくれたのよ」
ホント助かったと、もう一度礼を言った
「いつも家でお米運ぶお手伝いしてるから全然平気」
「そうなんだ、えらいね」
誉められて雪乃が、へへっと恥ずかしそうに笑う
「あ、ごめん遅刻しちゃうね。いってらっしゃい」
「行ってきます」
二人の声を聞き終わる前に有香は慌ただしく家の中へ入っていた
歩き出した時、思い出したように雪乃が聞いた
「あ、ねぇお姉ちゃんフリマアプリって知ってる?」
「何それ知らない。どんなの? 」
「なんかね、失くしたものをなんでも送ってくれるフリマアプリがあるんだって」
「何それ意味わかんない」
「有香ちゃんの荷物も失くしたものだったりして。お米と同じくらい重かったよ。何だろう」
人の家の荷物を詮索しないのと言いつつも華乃も気になったことがあった。
有香が家へ入る時に聞こえてきた赤ちゃんの泣き声だ。
確か数ヵ月前に有香ちゃんの赤ちゃんダメだったんだねと親たちが噂しているのを耳にしていたことを思い出したのだ。
「だってね」
そう言って雪乃は声をひそめる。
「足だって送ってもらえるんだよ」
まさか……
「ねぇ、こないだ荷物運んであげたとき赤ちゃんの声した?」
「してないよ」
「その前は?」
「そんなの、わかんないよ。有香ちゃんに会ったのだって、すごく久しぶりだったもん」
まさか、その噂が本当で有香ちゃんが赤ちゃんを……
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