赤ちゃん

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有香がベビーカーを押して玄関の鍵を開けていると、こんにちはと声を掛けられた。振り返ると近所に住む小学生が立っていた。 「あら茜ちゃん。こんにちは。今帰り?」 「うん。有香ちゃん久しぶりだね」 「赤ちゃん産むために、長らく実家に帰ってたからね」 そうなんだ、赤ちゃん見ても良い?と聞くので有香は娘を抱き上げ門の外へ出た。 「赤ちゃんかわいい~お名前は何て言うの?」 「こころって言うの。」 「名前もかわいいね。あれ?有香ちゃんの赤ちゃんって双子ちゃんじゃなかったの?」 そう言うと茜は不思議そうな顔でベビーカーを見ている。 「赤ちゃんね、一人は天国に行っちゃったんだ。」 先週末に帰ってから何人かとは話したのだが子どもには皆言ってないのかもしれない。 けれど無かったことになんてしたくないし、できもしない。 「そうなんだ」 茜が悲しそうにうつむいた。 「でも、こころは元気だから。茜ちゃん、いっぱい遊んであげてくれる?」 「いいよ!」 そう言うと満面の笑顔で頷いた。
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