6人が本棚に入れています
本棚に追加
紡がれる夢
桜の花は王を守る盾であり、紫の月は王を糺す剱である。
そして、雪の白はこの国を癒し、照らす王という光である。
白王。
世界の端に位置するこの大陸を、まとめて国とした最初の王。
すでに正確な歴史は残っておらず、お伽話として親から子へ、子から孫へと語り継がれているのみ。諳んじられるほど、何度も何度も。桜雉も、そのお伽話を聞かされて育った。
子供の頃、母に聞かされたお伽話を、今、小さな息子に聞かせている。
「―――桜花と紫月と琥白、三人が力を合わせて、バラバラだった大陸にすむ人たちを、まとめ、国をつくりました。・・・めでたしめでたし」
寝付かせる為にお伽話を聞かせていたはずなのに、らんらんと輝く息子の紺青色の瞳。がっくりと項垂れて、桜雉は息子に声をかけた。
「こら、桜兎。もう寝る時間だ」
「なあ、かあちゃん。それ、ほんとにほんとのはなし?」
「さあ、どうだろうねぇ」
話疲れた桜雉は、大きく欠伸をして目を閉じた。
「桜花って、ごせんぞさまだろ? あ、こら、かあちゃん、ねるなよ!」
最初のコメントを投稿しよう!