紡がれる夢

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紡がれる夢

 桜の花は王を守る盾であり、紫の月は王を(ただ)す剱である。  そして、雪の白はこの国を癒し、照らす王という光である。  白王(はくおう)。  世界の端に位置するこの大陸を、まとめて国とした最初の王。  すでに正確な歴史は残っておらず、お伽話として親から子へ、子から孫へと語り継がれているのみ。諳んじられるほど、何度も何度も。桜雉(サチ)も、そのお伽話を聞かされて育った。  子供の頃、母に聞かされたお伽話を、今、小さな息子に聞かせている。 「―――桜花(オウカ)紫月(シゲツ)琥白(コハク)、三人が力を合わせて、バラバラだった大陸にすむ人たちを、まとめ、国をつくりました。・・・めでたしめでたし」  寝付かせる為にお伽話を聞かせていたはずなのに、らんらんと輝く息子の紺青(こんじょう)色の瞳。がっくりと項垂れて、桜雉は息子に声をかけた。 「こら、桜兎(サト)。もう寝る時間だ」 「なあ、かあちゃん。それ、ほんとにほんとのはなし?」 「さあ、どうだろうねぇ」  話疲れた桜雉は、大きく欠伸をして目を閉じた。 「桜花って、ごせんぞさまだろ? あ、こら、かあちゃん、ねるなよ!」     
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