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母親の大声にたたき起こされて外に出ると、東の空には紫の朝焼けが広がっていた。
前日までの雨のおかげで、空気はひんやりとしている。大きく身体を伸ばし、深呼吸をすると、眠気も吹き飛んで、頭がすっきりとした。
「いい朝。ねえ、母さん。こんな早くにたたき起こして・・・どこか行くの?」
「城だよ。特に着飾る必要はないが、寝間着のままはまずいね。さっさと着替えといで、桜雉」
はぁい、と素直に部屋へと戻る。
白の袖のないシャツに、濃紺の短いズボン。手首と足首に布を巻き付けて、細いベルトで固定する。長い黒髪を後ろで一つにまとめ上げると、剣を佩くためのベルトを装着した。そのベルトに小さな鞄を括りつけたところで、はて、と首を傾げる。
城に行くというのに、剣を佩いてもいいものだろうか。
桜花の一族。桜雉の母を長とする、国守りの一族であり、桜雉は跡を継ぐ一人娘だ。
国の守りを担うため、武器を持って戦うが、実のところ素手で戦った方が強い。桜花の血筋は、己を硬化させて武器とする。その拳は殴れば何でも砕くし、硬化した皮膚はすべての武器を弾き、へし折る。
「準備は出来たかい、桜雉?」
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