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願い
目の前に建っているその家は、想像以上に朽ち果てていた。
これが夜だったら、絶対に入りたくない、いや、それ以上に近寄りたくもない位、禍々しい雰囲気を醸し出していた。
「なあこれ、中に入った瞬間に、屋根が落ちてきて、ぎゃーってならないよな」
「だ、大丈夫だと思うけど」
良平と琉斗は、縁側に回ると、床が抜けない様に、そっとその足を乗せてみた。
「ちょっとヤバい感じだな」
「うん。ゆっくり進もうね」
中に入ってみると、思ったほど暗い訳ではなかった。
壁の所々に穴が開いていて、至る所から光が差し込んでいるからだった。
「なんだ、全然怖くないじゃん」
良平は、急に元気を取り戻し、ずかずかと奥へ向かった。
「待って、待って、良平君早いよ」
琉斗が全部を言い切ったと同時に、大きな音をたてて良平の右足が床を打ち抜いた。
「だから言ったのに、大丈夫」
「いてて…だ、大丈夫だよ、これ位」
雨が吹き込んだその床は、至る所が腐食していて、柔らかかった。
その丁度柔らかい所を踏んでしまったのだったが、その柔らかさ故、ズボンは思いっきり汚れたが、痛みはなかった。
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