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廃屋を出た琉斗は、内心どきどきしていた。
(明日、学校でいきなり由佳ちゃんに声を掛けられたりして)
そう思うと、自然と頬がゆるんだ。
「琉斗君、なににやけてるんだよ、気持ち悪いなぁ」
「に、にやけてなんか無いよ」
琉斗は慌てて真顔に戻そうとしたが、妄想は止まらなかった。
「俺も、明日からレギュラーメンバーかぁ。腕を磨かなきゃだな」
「腕じゃなくて、足だろ」
「はあ?ばかじゃ・・・」
琉斗の言葉は、途中でいきなり遮られた。
大きな足音と共に。
地震かと思う位に揺れた地面。
突然遮られた日差し。
さっきまで並んで歩いていた良平の代わりに、そこには樹齢一万年の大木の様なものが聳え立っていた。
その大木の先を見上げると、それは大木ではなく、見た事のないような生物の足だと分かった。
全長は二十メートル程だろうか。
ゴジラの様な、ティラノザウルスの様な、だがそのどちらでもないその生物が、ゆっくりと足を上げると、頭蓋は割れ、内臓も飛び出している良平がそこにいた。
その生物は、恐怖でその場から動けず、全身を震わせながらその場にへたり込んだ琉斗には見向きもせず、潰れて血塗れの良平の体を掴むと、そのまま口に運んだ。
鈍い咀嚼音を響かせながら、その生物はゆっくりと去っていき、やがて消えた。
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