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気が付いた時には、俺は自身の足元を強く蹴るとその場で思ったよりも鈍い音が部屋に響いていた。
その鈍い音に気づいた彼女と、男の二人だ。慌てて彼女は俺の方へ視線を向けると立ち上がりこちらへと身を寄せて、緩く優しい笑顔を浮かべて口を開いた。
「ケイトどうしたの?おなか減ったのかな?水かな?」
ケイト。そう呼ぶのは俺の名前だ。彼女の優しい声だけが俺の名前を口にして、そっと俺の頭を撫でてくれる。
その心地よさに少しだけ目を細めると彼女も嬉しそうな声が漏れていく。
ほらな。やっぱり彼女は俺を愛してくれている。現に彼女が触れるのは俺だけだから。その意味を込めて男の方へ視線をやると、男が眉間にしわを寄せて彼女の背中越しに俺を見ていた。
ざまあみろっての。
鼻を鳴らすように男を横目で見てから、彼女を見上げると俺にご飯を取ってくるねと声をかけて部屋を出て行った。ということは嫌でも俺はこの男とこの部屋で二人っきりなわけで。
彼女がいないこの間に、一度男に言い聞かせてやろうか。そう思いながら再度男に視線を投げると、何故か相手の方がこちらとの距離を詰めて近寄ってきていた。
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