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いったい何のつもりだと男を見上げると、パッとしない顔が俺の姿を真正面から捉えていた。
俺に何か言いたいのかそれとも手を上げたいのか。はっきりしないままの男を見上げると、随分と重たいため息が俺の方へ降りかかってくる。
俺の顔を見て溜息をつくなんて失礼な男だと思っていると、疲れ切ったその顔が小さく口を開いた。
「…いいよな、お前は鈴に触ってもらって」
情けない声に情けない顔。こんな顔をする奴が同じ男だなんて考えらえない。男というものはもっと強くあるべきなのに。この俺のように。
「俺は全然相手にしてもらってない気がするしさ」
当たり前だろう。だいたいお前は彼女の恋人でもなんでもなくただの友人なんだからな。
俺が黙って聞いていることをいいことに、男の情けない声は止まることを知らない。
「…俺もイグアナだったら触ってもらったかな」
その声とともに、俺の目の前のガラスを二度指で叩く男に俺も同じ場所に手を当てて小さく一度叩くと一瞬委してその顔は驚いたものに変わっていた。
しかし、次の瞬間男の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「…俺一応彼氏なのになあ」
その言葉を吐き出した瞬間、俺は目の前のガラスを叩くと同時に自身の尾を強く地面に叩きつけた。
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