二十歳

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 甘い雰囲気に慣れない榛名はじっと押し黙っていたが、涼一は気にせず、鼻歌を歌いながら出て行った。  恋人になったのだなと、榛名はようやく実感する。  榛名は父親としては、明らかに落第だ。二人の関係を後悔しているわけではないが、まるっきり肯定できるわけでもない。  けれど親として考えても、やはりこの選択しかなかったようにいまは思えた。  子どもが選択する道が苦難に満ちたものであっても、それを妨害する権利は親にはない。子どもには子どもの人生を選ぶ権利がある。  それを見守るのが親の責務だとするならば、義理の父親としての最後の勤めは、恋人と兼業でも出来そうな気がする。このままそばにいればいいだけだ。ただし、親として見ている部分も残っているとばれたら、涼一は傷ついてしまうだろう。  心のどこかに残る父親の部分は、涼一のために隠しておこうと榛名は密かに決めた。  サンドイッチと湯気の立ち上るコーヒーを手に戻ってきた恋人は、当たり前のように、ただいまのキスをした。しそうだなと思っていたので、今回はさほど照れずに榛名もすることが出来た。  コーヒーをちびちび飲む榛名に比べ、涼一はあっという間に二つのサンドイッチを胃袋に納めた。 「なぁ涼一、誕生日プレゼント――」 「図書カードならいらないからな」     
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