十二歳

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 事後報告となった榛名の両親は、地元の星野の家の事情を知っていたため嫌がっていたが、実家へしていた仕送りの額は変わらないと伝えると渋々ながら承諾した。元々あまり仲の良くない家族だったから、幻滅も期待もなく、これからは一層義理程度に付き合えばいいと思っただけだった。  葬式を終え、夕方、二人でマンションに戻ると、涼一はあからさまにほっとした顔をしていた。 「……もうここに戻ってこれないかと思った」  涼一はダイニングテーブルに座ると、机に突っ伏し、大きく息を吐いた。慌てて揃えた黒のニットと子供用のワイシャツは涼一には少し小さかったようで、華奢な腕が袖から大きくはみ出していた。学校ではサッカークラブに入っている涼一は年中日に焼けており、子供らしい細さながら、しっかりとした筋肉を身に付け始めている。 「薄情な親戚ばかりで良かったじゃないか」  喪服のジャケットを脱ぎ、ソファの背に放り投げた。入院中の星野の父親は生活保護を受けていた。それもあって、通夜も葬式も榛名が支払いも含め全て手配をした。きちんと星野を送ってやりたかったから不満はないが、疲労は限界に近い。榛名は色白のため、目の下の隈が目立ってしまい、ひどい顔になっていた。 「父さんと母さんが、親戚の人達の前で頭下げてるとこ、なんとなく憶えてる。借金でたくさん迷惑かけたと思うから、しょうがないよ」  軽い口調は大人びていて、成長しているのは身体だけではないのだと榛名は感じた。     
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