十二歳

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「養子縁組の手続きが終われば、星野も安心するだろ」  テーブルの上には、朝食の皿やグラスが出たままだ。キッチンの床には、捨て損ねたゴミが何袋も並んでいる。何日分のゴミだかもうよく分からない。  着替えも片づけも、一杯の水でさえ用意するのが億劫で、榛名はだるい身体をソファに沈めた。こんなとき、以前なら星野が何も言わなくてもお茶を淹れてくれたし、テーブルの上には少々大雑把な料理と温かい風呂が用意されてあったものだけれど、それはもう望めない。  涼一は黙っていた。榛名だって、ありがとうとか、そんな感謝を求めていたわけじゃないから構わない。息を引き取る数日前、病床の星野とした約束を実行しただけだ。  榛名が涼一の後見人となるだけでは不安だったらしく、どうしても養子にして欲しいと星野に懇願された。諸々の手続きのことを考えれば、遺書を作った方がいいともちろん分かっていたが、それを口に出すのはこれからお前は死ぬのだと宣告するようで、どうしても切り出せなかった。 「星野のおかげで、俺の人生プランは狂いっぱなしだよ」     
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