七歳

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 子どもの前で恥をかかせてやる。  予告代わりに榛名はわざと皮肉げに笑ったつもりだったが、星野は気づいていないのか、能天気に「助かった」と笑っている。 「そんなんだから、継いだ会社が倒産しちまうんだ」  榛名が毒づいた意味が分からず、星野は曖昧に笑って首を傾げた。  ものの十分もしないうちに星野は戻ってきた。自分の後ろにしがみついて離れない息子を引き剥がし、頭を下げさせる。榛名を見る目つきには戸惑いが浮かんでいた。  このオフィスでは、数十億の遺産相続に悩むクライアントや、海外での知的財産権の申し立てを行う一流メーカーが仕事相手だ。星野ぐらい無神経でなければ、浮浪者同然の親子が入って来られるような場所ではない。そういう意味では、子どものおどおどとした態度はまともな反応だと言える。  星野が子どもの黒ずんだ帽子を取ると、汗でべとべとになった髪があちこち跳ね上がり、何日風呂へ入れてやっていないのかとウンザリした。 「お前に似てないな」 「ああ、妻の方に似てる。お前がここで働いてるってのも、あいつが僕に教えてくれたんだ」 「へぇ……。なぁ、星野の息子。君の母親はどこ行った? さすがに逃げ出したかな」  離婚していればいいのに。     
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