墓参り

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墓参り

 榛名はその日のうちに退院できたものの、岩下からは自宅療養を言い渡された。半端に残った荷物を片付けるだけで終わるのだが、事務所もすぐには使えないのだから諦めろと言われた。  そうしているうちに涼一の休日になり、電話で約束した墓参りに、二人で行くことにした。  エントランスを抜けると、正面から木枯らしが吹き付け、榛名は首をそびやかした。空気の冷たさに息がうっすらと白く濁る。  ニットの上にジャケットを羽織っただけでは足りなかったと後悔したが、エレベーターにまた乗って戻るのは億劫だ。  新幹線で一時間と、そこからレンタカーで三十分という星野の墓までの行程を考えると、帰りはもう日が落ちているだろう。このままでは少し厳しいかもしれない。  小雨は気になるほどではないが、寒いのは苦手だ。面倒でも取りに戻るべきかと逡巡していると、背後から涼一の手が伸び、グレーのマフラーを巻かれた。  涼一の体温を残したマフラーは温かく、あご下まですっぽり包まれる感覚は悪くない。 「お前は寒くないのか?」  後ろに立つ涼一を見上げれば、厚手のパーカーを着た肩がひょいと上がる。 「大丈夫。榛名さんと違って鍛えてるから」     
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