4月1日 大いなる緊張感

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 何を言っているのかよく分からない。途中で鼻が詰まりだし、声もかすれている。おまけに、お辞儀をしたときに頭がマイクに当たり、「ゴーン!」会議室に大きな音が響く。でも、誰も反応しない。笑わない。雰囲気はとってもおごそか。  何とか無事に式が終わり、廊下を歩きながら緊張感がほどけてゆくのが分かる。顔の緊張もほどけながら、みんなで3階の研修員室に入る。  第一の感想は、 「せまっ!ここで一年間過ごすのは、ちょっと!」 違う意味で顔の緊張感が戻っていく。  今日は、まだしなければならないことがある。研修員の代表を決めることと座席の位置を決めることだ。  代表は、一番の年長者、人生の先輩ということで丸西さんに決まる。本人も多少ためらいながらも条件付きでOK。 「私の言うことを聞くのですよ。いいですね!」  みんなは、それぞれ頷く。  次は、座席の問題。男性はみんな、紀の川市の小学校に勤務している若くて容姿端麗な宮井恵(みやいめぐみ)さんの隣に座りたくて仕方がない。海南市の小学校に勤務している居るか居ないか分からない鳥井達夫(とりいたつお)さんは、恥ずかしがってもじもじするばかり。でも、心の中では、熱いものがこみ上げている。  橋本市の小学校に勤務している図々しく自己中心的な早乙女和己(さおとめかずき)さんは、 「僕がみんなの席を決めてあげるよ。」  級長の丸西さんを一番前にして後は、宮井さんしか名前を覚えていないので、     
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