会いたい

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 車を走らせること三時間。俺は目的地より少し離れたところで足を降ろした。  観光地として有名な自然豊かなこの場所には、人が集まる場所とは別に少し変わった場所があるらしい。  俺はその場所へと、足を進ませる。少し怖いような、それでいて、少し期待するような、そんな気分。  道端にはたくさんの草が生えている。いわゆる雑草というやつだ。こっちの草にもあっちの草にもちゃんと名前はあるはずなのだが、それに意識する者などいない。雑草とそうでない草の差は、そういうところにあるのだろう。  駐車場からしばらく勾配のきつい上り坂を歩いたところで、もう一つのトンネルにたどり着いた。もう一つ、と言うのは俺の目的地もトンネルだからだ。でも、ここではない、もう少し先にあるという話だ。  このトンネルは、いまはもう使われていない。車で通り抜けはできないが、歩行者は自由に出入りできるように解放されている。  このあたりは心霊スポットとして一部の人々には有名らしい。とりわけこのトンネルは、肝試しをしに観光客が時折り訪れるそうだ。
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