会いたい

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 とはいえ、思ったほどではなかった、あんなの心霊スポットではない、などという話が多い。そんなのは当たり前なのだ。そもそもこういった場所に進んで訪れる者など、もともと怖いものが好みなのだから。  俺はトンネルの前で立ち止まり、辺りを少し眺めてみた。トンネルの入り口の少しを見ると、何の色かは分からないが青緑色の水の伝った跡が無数についている。トンネル自体が何かを飲み込む口であり、その跡はそこから漏れた唾液であるように見えてくる。まるで俺が入ってくるのを待ち構えているような、そんな感じさえしてきて、どうにも不気味である。  夜分は良くないと思って太陽が高い時間帯を選んできたというのに、これはこれで少し怖い。  右側は傾斜がきついので、いまの気分では見下ろす気にはとてもなれない。左の山側は、一面がまるで雑草の無法地帯である。風に揺られて喧嘩しているように見える草もあれば、その傍らで小さく咲いている小花も見受けられる。以前どこかで見たことがあるような、それともどこにでもあるのかもしれない、名も知らぬ花。だが俺は、ひっそりと息を潜めているような薄橙色のその花に、小さなシンパシーを感じた。
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