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後ろを振り返って見ると、下り坂が随分と続いている。それはそうだ、自分でいままで上ってきたところなのだから。ここまで来て、いまさら引き返すという選択肢はない。そんなことをするくらいなら、そもそもこんな場所には来ていないだろう。
俺は子供の頃から、怪談やホラー映画などの怖いものはとことん苦手だった。でも関わりすらしなかったから、あまり気にしなかった。
そんな俺が、自分からこんな場所に来る日がくるなんて。
もう一度あの花に目をやってから、目を閉じてゆっくりと深呼吸をした。風の音がトンネルに反響して、まるで俺を招いているような気がしてくる。普段よりも自分の息が少ないように思えたが、少しだけ標高が上がったせいだと勝手に解釈することにする。
一歩。そしてまた一歩。招かれたその大きな口の内に、俺は脚を踏み入れた。
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