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曲の浮かばない作曲家は、文章の書けない小説家や筆の乗らない画家と同じだ。多くの者はそれでも楽譜に、紙に、キャンバスに、必死でペンを走らせる。あるいはそれをしようとして、それでもできないことに絶望するらしい。
しかしそんなことを言っていられるのも、まだクリエイターとしての自覚とプライドがある場合だけなのである。何も浮かばない上に、作る気すらもなくしてしまえば、いくらでも時間を持て余す。
そうして俺は、ここにたどり着いたのだから。
吐息までもが反響するトンネルの中、だんだんと速まる足取りはまるで俺の緊張を直に伝えているよう。そんな些細なリズムの変化でさえ脳内で楽譜に起こしてしまう自分の習性に嫌気がする。
食べたら排泄するのと同じように、眠いと欠伸をするのと同じように、聞こえた音は譜面に起こすように俺の身体はできている。
不協和音で耳が曲がってしまう前に、トンネルの出口から差す光が眩しく目に入った。その光はまるで、再び陽の当たるところへ出てしまうことへの許しを与えているかのようだった。
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