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悲しみはー雲の上にー
悲しみはー雲の上にー
コーヒー牛乳を手に、菓子パンのコーナーをうろつきながらさっき覚えた正しい歌詞を口ずさんでいたら、そばに店員がいるのに気がついた。
恥ずかしくなって黙る。
「…あの」
しゃがんで品出しをしていた店員が話しかけてきた。
顔をみて、あれ、と思って、名札をみる。
…学生時代の後輩だ。
「ああ、久しぶり。ここで働いてるのか」
「お久しぶりです。先輩、鼻歌とか歌うんですね」
げ。
聞かれていたのか。
なんかちょっと気まずい。
選曲も古いし。
「しかもコーヒー牛乳とか飲むんですか?」
よくみてるなこいつ!
棚に戻すのも不自然だから、仕方なく頷いた。
「…似合ってなくて可愛いですね」
「褒めてないぞ」
思わず口に出した。
「褒めてますよ。似合ってなくて可愛いです」
可愛いって褒められてるのか。
後輩の笑顔を見ながら、胸のあたりで、世界が少しだけ動く音がした。
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