一.遊園地にて

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 秋が終わり、気温が下がると来園者が少なくなる。この遊園地で冬を迎えるのも二度目だなと智明は思った。というのも、経営不振が囁かれているため、今年の冬は迎えられないと思っていた。 「うちの遊園地ほんとやばいらしいな。」 ほぼ同じ時期に入ったバイトに言われ、智明は着ぐるみを着るのを手伝ってもらいながら言った。 「マジで? いや、確かに色々老朽化してるなって思ったけど。」 「社長が手放すらしい。あんまり採算もとれないらしくってさ、更地になるんじゃね? 」  二つ県を跨げば世界的に有名なテーマパークがあり、そこに行くのが面倒な客くらいしかこない。もしくは、やや廃墟と化したこの寂れ具合を写真に撮り、インスタ映えを狙う若者くらいだろうか。 「俺も次のバイト先探してるんだけどさ、葉山どっかいいとこ知らない? 」 「俺もそんなバイトしたことないからな。前の職場よりもここが好きだったから、辞めたくない。」  茶色く脱色した髪をかきながら同期の里山は言った。 「この職場おばちゃんかおっさんか野郎ばっかでさー、可愛い子は事務ですぐやめちゃうし……でも清水さんいるうちはやめたくねぇんだよな。」 「奈菜さん可愛いよな。」 「だよな。あの人可愛いだけじゃなくてさ、なんかこうエロいじゃん。」  智明はブーツをはきながら言った。 「お前さ、それ奈菜さんに言うからちょっと距離置かれてるんだぞ。」 「だってさー、奈菜さんオメガじゃん。いけるかもって思うじゃん。」  里山が持っている着ぐるみの頭を取った。 「俺もオメガって知って言ってんの? 」 「おー、言われてみれば、お前黙ってるとなんかエロい。」 「……さっさと辞めちまえ。」  犬のぬいぐるみの頭を被ると、智明は園内に出た。  着ぐるみの仕事をしていてもつらくない季節になってきた。夏は暑くて倒れそうになるが、最近はそれほど苦しくない。ほくとう遊園地と書かれた看板の向こうから、親子連れがやってくるのが見えた。智明を見つけて子供が走ってくる。 遊園地のマスコットキャラクター、犬のピーターは中々可愛い顔をしているので、遊園地で家族連れや子供たちには人気だった。
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