第五話 6と6・5のつるぎ

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江戸時代の日本には、大きく分けて七種の仮親(かりおや)がいた。 帯親(おびおや)、 取り上げ親、 抱き親、 行き会い親、 乳親(ちおや)、 名付け親、 守親(もりおや)だ。 疾患に対する医療措置が限られ、病は魔や鬼の働きとされた時代、子どもが生存し成長する確率は儚いものがあった。 治癒を祈願する祈祷もあったが、現代にも通ずる、最後にして最善の対抗手段は地域コミュニティの絆だった。 大人たちは地域毎に団結・協力して、自身の子でなくとも、子どもの生命を守っていたのだ。 人間を守れるのは、人間性だけだと言える。 こどものつるぎとは運動体である。 こどものつるぎとは親の異名である。 力ある親は、つるぎとなって、脅威から子どもたちを守る潮流そのものとなった。 しかし敵の精鋭『疑問を抱きし者』の悪知恵は、親の愛をも利用するに至る……。 やがて潮流は途絶え、人類に残された子どもは一人のみとなった。 子の名は一滴の名を冠するしづく。 そして彼女を守るのはただ一人、藁で出来た青年だった……。 これは水の物語。 ぶつかり合う荒波より生まれた(しずく)の成長記。 これは糸の物語。 人類史という縦線と侵略という横線が織りなす、一枚のビロードに描かれた破壊と創造の紋様。 これは勇者の物語。 一人の愚者(おろかもの)が、子どもたちを、人類を、地球を、やがてまた別の未来を救う勇者となる、絶望と希望の英雄譚。 …………あなたが思う結末では、きっとないけれど。  
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