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自分の命を犠牲にしてでも、妻と子を逃がす時間稼ぎになればと覚悟したが、妻が部屋を出る頃には決着が付く。
スターサバイバーは、徹底的な交戦よりも他の個体への情報共有を選んだ。それが彼らの恐ろしい習性の1つで、無理な交戦はしないのだ。
奴は羽を広げ、ヘリコプターのように宙を叩くと、自分が開けた屋根の穴から空に逃げようとした。父親は逃走に気付くが、一瞬の迷いを見せる。
不思議な変身を遂げたが、彼は数分前まで家庭的な工場職員だった。戦うよりも優先すべきは家族の無事だ。
ところが、空を舞うスターサバイバーの視線は、脱出した妻と子にあった。それに気付いたとき、父親の頭に一気に血が上り、彼は跳躍した。
数秒後、父親はスターサバイバーの体液を全身に浴びて、敵の息の根を止めていた。
弾丸の如きスピードで、スターサバイバーの身体を夜空で引き裂いたのだ。
変身によって得た超人的な跳躍力だけではない。その背中で大海のようにうねる〝マント〟に、威力の秘密があった。
後に長女と長男の意見を足して〝そらよ、うみよ、だいちよ〟と名付ける創造兵器がそれだった。
スターサバイバーの体液には他の個体を呼ぶ特殊なフェロモンがあった。
その体液を浴びることによって、その瞬間より、平凡な夫婦は、こどものつるぎとしてスターサバイバーと徹底交戦する宿命を背負うことになる。
夫婦はただ純粋に、地域と、そして日本、世界、地球を守ろうとした。
当然、すべては2人の我が子を守るためだった。
その思いと背負った一対のマントが強大な力を生み、夫婦は七つのつるぎに参名する。
妻はレインフォレスト、夫はウォーターゲートと名乗り、その特殊な飛行能力を生かして、あまねく海域を守った──。
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