第五話 6と6・5のつるぎ

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──現在。泥水が結晶化したような、灰色の雪が踊り狂う荒天の下。 海の上に四つの影があった。 空を飛ぶ二つの影に、彼らが持つ縄によって吊るされ、宙吊りになった二つの影だ。 吊るされているのは美しい見た目をした男女で、ボロ切れを身に纏い、みすぼらしい格好をしている。 彼らの背後では、黄金の巨人が咆哮を上げ、怒り狂ったように水面を叩いてはしぶきを上げていた。 それは異様にして残酷な光景だった。 「──七つのつるぎは、子どもを人質に取られたんだ」 ハロウは自分に言い聞かせるようにそう呟いた。 現在、ハロウは自分の身体を縫っていた。 彼は身体の至るところに針と糸を仕込み、怪我をした際は皮膚を縫った。それが治療だった。 千切れた皮膚はベロンとめくれ、まさに布きれのようになっているが、不思議と、縫って繋げていくと縫い目はすっと消えていき、血管がめぐる人間の皮膚のように、温かく、柔らかい質感となった。 しづくは出来る限り藁を拾い集めて、ハロウの腹や脚に詰めた。そしてハロウの手足を支えて、縫合を手伝った。 ヤトゥリバはこと切れたのは10分ほど前の出来事だ。 その際、彼はしづくにふ菓子を渡して小さくこう呟いた。 「……ガグドを捜せ」 「……ガグド?」  
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