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──ハロウとしづくは、いもいもくんの助言ですぐに移動を開始した。
しかしハロウの損傷が酷い。しづくは急いでハロウの身体の部位をかき集めると、売店があった小さな建物の中に避難した。
その際、しづくはある物を拾う。
地面でぼんやりと光っていたので拾ってみたが、光ったのは一瞬で、すぐに暗くなった。
それは手鏡のように薄く四角い物体だった。しづくが両手で持つと、すっぽりと収まる大きさだ。
テレビのように片面が光って見えたが、今は稲光を反射する黒い画面だけになっている。画面には亀裂が走っていた。
しづくは暗夜を見上げた。亀裂は、高いところから落ちて出来たように思えた。
「何やってる、風邪引くぞ!」
と売店のほうから、いもいもくんの声が聞こえた。
しづくはすぐにその物体を放り投げ、走りだす。
地面に放られたはずみで、また光った。
画面には時刻らしき数字が浮かんでいる。
それは、昭和74年のこの世界には存在しないはずのアップル社製の『アイフォーン』だったが、しづくにはそれを知る由もなかった──。
テナント内で、ハロウは自身の縫合を開始、その間にヤトゥリバとの闘いで得た情報を整理していた。
ハロウは腹に糸を通しながら言った。
「こどものつるぎは、親だった……」
いもいもくんが大きく頷く。そして小さくこう言った。
「……子どもがさ、誘拐されて……恐怖したとき、まず初めに、何を想像すると思う?」
「……パパやママが、助けに来てくれるすがた……」
しづくがそう答えた。
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