649人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉を最後に、ハロウの縫合は終わっていた。
彼は、窓から見える暗夜を睨み、ヤトゥリバの最後の言葉について思い起こす。いもいもくんに訊いた。
「……ガクドって何なんだ?」
いもいもくんの身体がゆっくりと横に揺れる。
「わからない。けど『最後の償い』と言っていた。俺様が思うに、七つのつるぎは、まだ完全にスターサバイバーに寝返った訳じゃなさそうだ」
「そ、それなら味方になってくれないかな、しづくを助ける……」
「いいや、甘い考えはよせ。人類を裏切ったんだ。そう簡単にはいかねえだろう」
「け、けど、やっぱりそのガクドに、希望があるかも……あっ、もしかしたら、それが『花咲ける大地』かも!」
すると外から大気を震わせる咆哮が聞こえた。巨大な汽笛や警報を思わせる響きは、一行に地震に遭遇するような不安を抱かせた。
ハロウの脳裏に、月の光を反射させる巨人の姿が浮かぶ。
「またあの、金ピカのロボットだ……」
いもいもくんも窓の向こうを睨んだ。
「暴走して近くの海にいるとか言ってたな、ここも早いとこ、離れないとあのヤトゥリバみたいに……」
「しづくさまぁ……」
ハロウとしづく、そしていもいもくんが緊張した面持ちで、互いの顔を見合わせる。
そのとき、その場にいる誰のものでもない声が聞こえた。
「お逃げくだちゃい、しづく様ぁ……!」
「んん?」といもいもくんが耳(と言っても芽が生えた窪み)をすました。
外から「しづく様、しづく様」という男女の声が聞こえるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!