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いもいもくんがその小さな身体で、慎重に、窓から覗くと、雷光によって浮かぶ男女の影があった。
見覚えがある2人だ。
「ありゃ、つるぎ人形じゃねえか」
地下施設で、マダムが、『グナイゼ』と『アーリイ』と呼んでいた、こどものつるぎレプリカの2体だった。
こどものつるぎレプリカ、マダムがCS-Rと呼んでいた計画で、精巧な人形を創力によってこどものつるぎにするというものだ。
いもいもくんは彼らを嫌味を込めて「つるぎ人形」と呼んだ。
グナイゼとアーリイはみすぼらしい格好だ。そして交互に、こう続けた。
「どうか、お逃げくだちゃい」
「つるぎが捜してるよ」
「これは罠でちゅ」
「そのまま隠れな」
奇妙な口調の2人だった。
グナイゼと呼ばれる長髪の美男子。耳を黒く長い髪で隠し、赤ん坊言葉を思わせて語尾に「ちゃい」や「でちゅ」と付けた。
アーリイと呼ばれる鳥の巣のような金髪(今は雨に濡れてワカメのようになっていて目が隠れた彼女。)は、まるで90歳のおばあさんのように粗雑で無駄を省いた、達観した喋り方をしていた。
またその訴求も奇妙だった。
しづくに対して、「そのまま隠れていろ」と連呼しているのだ。
いもいもくんの背後で、ハロウも2人の様子を観察していた。
「お、お、おれ……行ってみる」
緊張から震えた声だ。いもいもくんは怒気をあらわにする。
「チョー馬鹿! 罠だ、間違いなく……!」
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