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「あなたの頭でも、それは理解しているでしょう?」
「はい……」
次にマダムは、暗い天井を指差した。
「ここはしづくの力で、外界からは認識できない隠れ家。
外の世界は異星人に侵略され、各国のどの機関も機能しなくなった地獄世界。おわかり?」
マダムは次に、棚に置かれた紙の束を指差して、ポツリと言った。
「現在は、昭和74年」
それは手書きの書類で、文明の停滞を物語っていた。
彼女は、書類の不吉な文章をなぞった。
【昭和59年の7月7日、七夕。
後の〝破滅の七夕〟と呼ばれた日。
ロサンゼルス・オリンピックを控えた世界で、突然、地球に無数の地球外生命体がやって来て、破壊の限りを尽くした。
その事件によって日本の元号は昭和で止まった。
だが同時に、対抗する力も生まれた。
全世界で〝宇宙でも戦える英雄〟が誕生したのだ。】
マダムは唇を舌で舐めて、低い声で恨めしそうに「けどね」と言って、こう吐き捨てた。
「正義は負けて、地球は宇宙人に奪われてしまいました」
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