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「ママが、もうハロウとハローするなって」
無数の絵本に囲まれた、温かい日差しが差し込む子ども部屋。
カラスの濡れ羽色の髪の美しい少女が、青いマフラーをした青年にそう告げた。
のっぽな青年の名は、ハロウ。この豊かなでぬくもりに溢れた家を、ひたぶるに掃除する存在。
見た目は十八歳ほどの青年で、八歳の男の子が二人がかりでやっと彼のモヒカンカットの髪に触れることができる。
体重はとても軽く、もしも九歳の女の子がこの地下にいれば、「よいしょ」と簡単に、彼を持ち上げることができるだろう。
手足は密林の猿のようにひょろりと長く、いつも青いマフラーで口もとを隠していた。
マフラーはボロボロでツギハギだが、彼の手先は器用で、丁寧に縫われていた。
鮮やかなパープルと淡いピンクを混ぜたような特異な毛髪は、サイケデリックだけど、カラフルなベアーのぬいぐるみを思わせる。
充血したように見える目だが、よく見ると瞳は赤みがかり、十二時を指した円盤時計のような印象を見る者に与えた。
虚ろな眼差しで指を噛み、それを嗅ぐのが癖で、しづくによく怒られた。
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