第一話 血濡れた勇者

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ハロウは首から垂れた青いマフラーを肩に乗せ、しづくにすり寄った。 「そ、そんな……な、何でなんだい、しづく!?」 ハロウの声がさらに震えた。 何故なら、ハロウにとってしづくは心臓に咲いた白いバラで、抜けば彼も死んでしまうからだ。 しづくは膝を抱き、床に散らばった本に視線を落とした。 オズの魔法使いという本だ。 「ママが、ハロウは……ぼくに、『悪い影響がある』から、って」 ハロウは数秒間沈黙した。頭の中では、大切なしづくの心に届く言葉を捜していた。 そして独特な発想を見せる。 「しづくのゆ、夢ってお医者さまだよね?」 「そうだよ……」 「……この家から出ないままで、お医者さまってなれるの?」 しづくもまた数秒間沈黙した。 そして、虚ろな瞳をハロウに向けて、蚊の鳴くような声で小さく、ある言葉を言った。 「      」 ──少しの会話の後に、ハロウが何か言うよりも先に、突然部屋のドアが開いた。 そして一人の女性が入ってきた。白衣を着た長身の女だ。 「そこまでよ、しづく」 「マダム」 とハロウが女を見上げる。  
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