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ハロウは首から垂れた青いマフラーを肩に乗せ、しづくにすり寄った。
「そ、そんな……な、何でなんだい、しづく!?」
ハロウの声がさらに震えた。
何故なら、ハロウにとってしづくは心臓に咲いた白いバラで、抜けば彼も死んでしまうからだ。
しづくは膝を抱き、床に散らばった本に視線を落とした。
オズの魔法使いという本だ。
「ママが、ハロウは……ぼくに、『悪い影響がある』から、って」
ハロウは数秒間沈黙した。頭の中では、大切なしづくの心に届く言葉を捜していた。
そして独特な発想を見せる。
「しづくのゆ、夢ってお医者さまだよね?」
「そうだよ……」
「……この家から出ないままで、お医者さまってなれるの?」
しづくもまた数秒間沈黙した。
そして、虚ろな瞳をハロウに向けて、蚊の鳴くような声で小さく、ある言葉を言った。
「 」
──少しの会話の後に、ハロウが何か言うよりも先に、突然部屋のドアが開いた。
そして一人の女性が入ってきた。白衣を着た長身の女だ。
「そこまでよ、しづく」
「マダム」
とハロウが女を見上げる。
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