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偶然ではなかった。
ハロウは意識的に、その応用を意図していた。
この地球において、一人の少女を、かつての七名の英雄と対峙し守り切り切ることは、何よりも難しいことだ。
だが、その覚悟と責任を、ハロウは既に決めていた。
すべては『しづくを守るため』。
ただその一点にのみ、マグマをも飲み干す執念を燃やした。
しづくの守護という結果を導くためには、内臓に異物を入れ、身体を爆ぜさせるという想像を超えた新次元の拷問にも嬉々として身を投じていた。
ヤトゥリバは、心からハロウを尊敬した。その執念に感服していた。
「……七つのつるぎ全員そろっても勝てる気がしないと思ったよ。一瞬は」
だが、その応用には誤算があった。
創造兵器という超然を、即席に応用するには、リスクもまた道理だった。
ハロウの藁で出来た身体とボロボロの服は、創造兵器による膨張に耐えることができず、爆ぜてしまったのだ。
そしてヤトゥリバは今、話すことを止めた。
仲間の知将を見習い、1ミリでも油断を排す。その行動はある種、ハロウへの敬意だった。
彼は尻尾を揺らして、ハロウの千切れかけた首に向けた。
そのとき──再び、キャッスルがまばゆい光に照らされた。
「あーぁっ」
次の瞬間、その発光がヤトゥリバの姿を包み込んだ──。
──その現象は、キャノンゴールドによるあの必殺兵器だった。
キャッスルはさらに形を失い、正面右はネズミにかじられたようにえぐれていた。
その瞬間、ヤトゥリバは、地面を蹴り、避難しようとしたが、
させねえ。
言葉はなかったが、あの反抗的な赤い瞳が、そう言っていた。
ハロウが、ヤトゥリバの足首を掴んだのだ。
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