#2 店

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  「こんな美味しい紅茶、僕、初めて飲みました!」  彼は興奮して、すごく素敵な笑顔を見せてくれた。  初めてのお客様に、そんな風に言って貰えるなんて。こんな満足感、初めてだった。  彼が、ロイヤルミルクティーの隠し味を聞いてきたから、内緒だと言っておいた。これは、私が苦労して考案したんだもの。簡単には、教えられないな。  暫くして、おかわりまで注文してくれた。こんなことも、初めてだった。  私はとても嬉しくなって、何時も以上に丁寧に心を込めて、ロイヤルミルクティーを淹れた。茶葉を煮出して、たっぷりのミルクと私の考案スパイスを少し入れる。これだけで、断然味が変わってくるの。二杯目を彼の前に置くと、頂きます、と礼儀正しく合掌してくれて、美味しいと笑顔を見せ、飲んでくれた。本当に嬉しかった。  彼は、多田井桔平君と言った。十八歳で、同じ年。好きなミステリー作家の作品の話で盛り上がった。犯人の話、トリックの話、好きな作品のどの場所が好きか、とか。沢山おしゃべりした。とても楽しくて、あっという間に時間が過ぎた。  もう帰る時間だから、と言って彼は帰って行った。  私の淹れたロイヤルミルクティー、また、飲みに来てくれると約束してくれた。  また、会えるんだ。  心の奥が、きゅっと温かくて、嬉しい気持ちになった。  桔平君に、また、早く会えるといいな。  
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