#1 雨

3/7
前へ
/18ページ
次へ
 その日は、予備校の模試テストの結果が散々で、僕はあてもなく街を歩いていた。足取りは重く、見るもの全てが僕の気持ちを憂鬱にさせた。  僕は、見た目も冴えないし、名前もダサ井と呼ばれている。多田井 桔平(タダイ キッペイ)――見た目が冴えないせいで、タダイじゃなくダサ井と陰で呼ばれているのだ。そんな僕だから、十八年間生きてきて、彼女の一人も出来た事は無い。エンジョイスクールライフには、無縁だ。  勉強だけが取り柄で、必死に頑張って来たのに、テストの結果に打ちのめされた。  僕から勉強を取ったら、何も残らない。  何度ため息を吐いただろう。空だって、朝は晴れていたのに、今はどんより曇っている。分厚く重たい曇り空は、まるで僕の心模様だ。  今日だけで何百回と吐いたため息が出たところで、僕の頬に冷たい滴が落ちてきた。雨だ。この上雨まで降ってくるなんて、本当にツイてない――そんな風に思っていたら、いきなり雨の勢いが増し、ざあざあと降ってきた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加