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「初めてですよね。どうぞ、こちらに」
できれば端っこで大人しく飲みたいという事すら言えず、カウンターのど真ん中まで案内された。店内は、僕以外もう誰もいない。
「急に降ってきましたね。よかったら、このタオル使って下さい」
そう言って、柔らかいタオルを差し出してくれた女の子は、今時珍しいおさげの髪をしていた。髪は綺麗な黒色で、レトロな昭和な雰囲気がする子だ。目は大きくクリっとしていて、鼻筋は整っており、美人というより可愛らしい容姿の女の子だった。ブレイクという店の名前が刺繍された、黄色のチェックのエプロンをしている。明るい雰囲気の彼女に良く似合っていた。
「ありがとうございます。助かります」
確かに酷く濡れていたので、受け取ったタオルで遠慮なく頭を拭いたら、借りたタオルが、ずいぶん濡れてしまった。
「すみません、かなり濡れてしまいました。洗って返します」
またこの店に来なくてはいけないのは面倒だが、このまま汚してしまったタオルを返す訳にはいかない。
「そんなの、気にしないでください」
真面目ですね、と 笑われてしまった。結局、使用済のタオルを返すことになった。
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